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村瀬藤城 筆跡
村瀬藤城 掛軸 六祖慧能図 (2026年02月入手)
無道人之短
無説己之長
施人慎勿念
受施慎勿忘
世譽不足慕
唯仁為紀綱
隠心而後動
謗議何庸傷
無使名過實
守愚聖所臧
在涅貴不緇
曖曖内含光
柔弱生之徒
老子誡剛彊
行行鄙夫志
悠悠故難量
慎言節飲食
知足勝不祥
行之苟有恒
久久自芬芳
歳己卯秋九月 邨瀬絅書
人の短を道ふこと無かれ
己の長を説くこと無かれ
人に施しては慎みて念ふこと勿れ
施しを受けては慎しみて忘るること勿れ
世の譽れは慕ふに足らず
唯だ仁を紀綱(行動の格率)と為せ
心に隠(はか)りて而して後ち動かば
謗議、庸何(なん)ぞ傷まん
名をして實に過ぎしむることなかれ
愚を守るは聖の臧(よし)とする所
涅(でつ)に在りて緇(くろ)まざるを貴び
曖曖として(鷹揚に構へて)内に光を含めよ
柔弱は生の徒なり
老子も剛彊を誡しむ
行行(一途に過ぎ)たるは鄙夫の志
悠悠たるは故(もとより)量り難し
言を慎しみ飲食を節し
足るを知らば不祥に勝たん
之を行ひて苟(まこと)に恒(つね)有らば
久久、自ら芬芳あらん
歳己卯(文政2年)秋九月 邨瀬絅書(※崔子玉「座右銘」)
偶来法性見風旛
始信黄梅衣鉢尊
舂石曽留餘粒在
晨炊暮爨飽児孫
邨瀬絅拝題
偶ま来たる法性、風旛(非風非幡の公案)を見(あらは)す
始めて信ず、黄梅の衣鉢(黄梅山の慧能)、尊きを
舂石(を担って米を舂いた慧能)、曽(かつ)て留む、餘粒の在るを
晨に炊き暮に爨いで児孫を飽かさん
邨瀬絅拝題
【参考】
『續座右銘并序』 白楽天
崔子玉座右銘余竊慕之 崔子玉の座右銘は、余、窃かに之を慕ふ。
雖未能盡行常書屋壁 未だ尽くは行ふこと能はずと雖ども常に屋壁に書す。
然其間似有未盡者 然れども其の間、未だ盡さざる者有るに似たれば、
因續為座右銘云 因て續いて座右銘を為すと云ふ。
勿慕貴與富 貴と富とを慕ふ勿れ
勿憂賤與貧 賤と貧とを憂ふ勿れ
自問道何如 自ら(論語の誨へ通り)道の何如なるかを問へ
貴賤安足云 貴賤、安んぞ云ふに足らん
聞毀勿戚戚 毀しらるるを聞きて戚戚たること勿れ
聞譽勿欣欣 譽むらるるを聞きて欣欣たること勿れ
自顧行何如 自ら行ひの何如なるかを顧みよ
毀譽安足論 毀譽、安んぞ論ずるに足らん
無以意傲物 (利せんとの)意を以て物に傲ること無かれ
以遠辱於人 以て人から辱かしめらるるに遠ざかれ
無以色求事 (欲)色を以て事を求むること無かれ
以自重其身 以て其身を自重せよ
遊與邪分岐 邪と與に遊べば岐にて分かれよ
居與正為隣 正と與に居らば隣と為せ
於中有取捨 (この)中に於いて取・捨有り
此外無疎親 此の外には疎・親無し
修外以及内 外(面)を修めて、以て内に及ぼし
静養和與真 静かに養はん、「和」と「真」とを
養内不遺外 内を養ひて外を遺(わす)れず
動率義與仁 (自ら)動いて率(みちび)け、「義」と「仁」とを
千里始足下 千里も足下に始まり
高山起微塵 高山も微塵より起こる
吾道亦如此 吾が道も亦た此の如し
行之貴日新 之を行ひて日に新たなるを貴び
不敢規他人 敢へて他人を規(ただ)さず
聊自書諸紳 聊か自ら諸(これ)を紳(おび)に書し(論語にある如く銘記し)
終身且自勗 終身、且らく自ら勗(つと)め
身歿貽後昆 身歿すれば後昆(子孫)に貽さん
後昆苟反是 後昆、苟しくも是に反するは
非我之子孫 我の子孫に非ざらん